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東アジア、東南アジア、南アジアからなるアジア全域をみわたせば、第二次世界大戦後は、まず東アジアの一部が経済的に繁栄し、さらに繁栄は東南アジアに伝播していったが、政治的には依然としてアメリカの掌中だった。
前出の『ビジネス・ウィーク』が日本や韓国の経済的繁栄は、世界的な勢力図を変えなかったというのは、その意味で正しい。
また、経済的繁栄をとげても東南アジア諸国は、安全保障を考えるさいの大きなファクターとならなかった。
国はアメリカが仮想敵国とする軍事大国となりつつあり、インドも着々と軍事的な力を蓄えてきた。
もちろん両国とも核兵器を独自に保有しており、この点でも他のアジア諸国とは異なっている。
何より際立った特徴は、多民族国家でありながら古いタイプの国民国家をいまも志向していることである。
この点は、グローバル化を肯定的に捉える榊原英資氏ですら、『アジアは近代資本主義を超える』(中央公論新社)で、注目すべき傾向として論じている。
「この中国やインド等の急速な台頭は従来までのアジアの政治・経済秩序を大きく変える可能性を秘めている。
その理由の一つは、中国やインド等がアメリカとかなりの距離をもち、その「半主権プロジェクト』に組み込まれていないことである。
十九世紀型の主権国家を志向する中国やインドにとって、……いままでのアジアの政治・経済政策は少なくともそのままの形では受け入れられるものではない」もし本当にそうであるなら、チンディアが目指すものはグローバル経済のお裾分けでも、アングロ・サクソン型経済の優等生になることでもない。
少しひいき目にみれば、当面は自らの独立を保持するためにグローバル化を利用するという戦略的意図に基づいて、いまのアングロ・サクソン型経済に加担しているという側面もあるのかもしれない。
中国とインドの「挑戦」は、経済だけでなく政治の分野で大きいもちろん、その前には多くの障壁が横たわっている。
そもそもチンディァがいくら急成長をとげているとはいえ、前出の壱ジネス・ウィーク」も指摘するように「中国とインドは、毎年一○○○万人増加する労働者に職を与えるため、少なくとも八%の成長を維持しなくてはならない」。
また、「インドが三○兆ドルのGDPを達成し、第二一位の経済大国になるには、ゴールドマン・サックスの予測では年に八・五%の成長が必要とされている」。
いったい、こんなことが可能なのだろうか。
中国はいまもインフラの整備がなかなか進まないが、インドはそれに輪をかけて悪い。
中国は製造業が急伸しているが効率が劣悪で、インドのソフトウエア産業は効率がよいが、その分だけ雇用が伸びない。
資源があるといっても人口が多すぎて、エネルギー問題がネックになることは火を見るより明らかだ。
両国とも最先端の技術やビジネスのための教育を取り入れることに熱心だが、農村の教育が遅れており、インドなどはいまも子供たちが地べたに座って小型黒板に文字を書いて勉強している。
しかも、GDPだけの総計が、どれほどの意味があるかはEUを見ればわかるだろう。
E Uがユーロを採用する時点でも、GDP総計はアメリカに迫っていたが、急速なユーロシフトは生じなかった。
すでに述べたように、ヨ−ロッパにおいてもビジネス決済におけるドルの比率が高く、経済的統合が生まれ、政治的統合がある程度進み、統一通貨を採用するにいたっても、なおアメリカ経済からの脱却は進まなかった。
そうしたことをすべて踏まえたうえでもなお、チンディアにアメリカの政治的支配を回避する意欲があるとするならば、その経済的急伸はアジアに政治的な意味で、やはり新たな風を吹き込むだろう。
戦後のアジア的政治のありかたから脱するという意味でも、また、アメリカ中心のアングロ・サクソン型経済が動揺するという意味でも、新たな動きが強まる可能性を潜在させている。
昔、豊田商事事件という、金融詐欺事件があった。
この会社の社員たちは、「金塊と交換できる証書です」と言葉たくみに老人たちからお金を巻き上げたが、裏づけとなる金塊がまったくないことが発覚した。
悪質な詐欺だというので、豊田商事の責任者のマンションにマスコミが押しかけると、突然、ある男が窓ガラスを割ってマンションに侵入し、責任者を殺害してしまった。
真相は、いまもよくわかっていない。
また、次のような事件はしょっちゅう起こっている。
「この株式はこれから伸びるから、いまが買い時です」と証券会社の熱心な販売員に説得され、総額三六○○万円分買ってしまった。
ところが、その株は実はピークを迎えていたらしく、下落して三分の一の二一○○万円になってしまった。
文句をいうと販売員は、「株式投資というのは、そうしたものです」と、掌を返したように冷ややかになり、まったく取り合ってくれない。
こうした詐欺と詐欺まがいの事件が起こったら、普通の人は二度と引っかからないだろう。
少なくとも、かなり警戒するようになる。
ところが、ドルをめぐる日本政府の対応は、とても「普通」とは思えない。
ドルは一九七一年に免換紙幣であることを突如やめてしまった。
つまり、アメリカは一方的に金塊と交換するのをやめたのである。
第もちろん、世界金融経済と金融詐欺事件を同列に並べることはできない。
また、いまの経それだけではない、アメリカは貿易赤字が巨大に膨らんでいるのに、いまも中国や日本から巨額の輸入を続けている。
アメリカ国民の貯蓄はマイナスでも消費は上昇を続けている。
どう見ても稼ぐ以上に消費している。
こんなことをいつまでも続けられるのだろうか。
しかも、アメリカが発行したドルの七分の六は、アメリカの国外で流通しており、アメリカ政府がちゃんと管理してくれているようには見えない。
もういつなんどきドルが暴落してもおかしくないとすら思える。
それなのに、日本は巨額のドルを保有し、アメリカ財務省証券(米国債)を、いまも買い続けているのである。
また、すでに述べたように八五年のプラザ会議によって、国際協調の名のもとに「円高・ドル安」が合意され、当時、一ドル二四○円だった為替レートは、すぐに一ドル一二○円となり、一時は一ドル七九円にまで達した。
現在は、だいたい一ドル一二○円だから、七一年に一ドル三六○円だったドルは、いまや二一分の一の価値に下落したのだ。
アメリカ政府も、八九年ころには目くじらを立てて「日本は構造改革をして貿易黒字を解消しろ」といっていたのに、いまは何もいってこなくなった。
八○年代、FRB議長ポール・ボルカーは、議会で「アメリカ人は稼ぐより多く買っている」と証言したものだが、いまやそんなことをいう米政府高官はいなくなってしまった。
それどころか最近は、アメリカが貿易赤字を続けているのに着実にアメリカにドルが還流しているのは、アメリカ経済の強さを証明するものだと述べるようになっているのである。
総合的に考えて、やはりドルは危ういと思うのが自然だろう。
ある特定の通貨を基軸通貨として信頼しているというのは、その国の産業基盤がしっかりしていて、国家の経常収支も「正常」の範囲以内であることが前提だ。
アメリカはそうではない。
累積した経常赤字は膨大なものになっている。
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